子どもの風邪

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Fever
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子どもが風邪をひいたら

子どもが熱を出したり、下痢が続いたり、はたまた咳をして吐いてしまったりしたらお母さん、お父さん、保護者の方は誰だって慌てますよね。

風邪は基本的には何らかの病原体に感染することで起こります。

基本的にという接頭辞を付けたのは、中には川崎病などのいまだに原因不明の風邪に似た症状を引き起こす病気が紛れ込んでいるからです。

ここでは、細菌やウイルスに感染することで発症する子どもの風邪について季節ごとにお話しし、最後に川崎病についても簡単に触れておきたいと思います。

風邪症状の原因

さて、大人も子どもも風邪っぽい症状(例えば発熱、頭痛、喉の痛み、咳、腹痛、下痢など)が出た際、原因として多いのは細菌とウイルスのどちらが多いかご存知ですか?

答えは、ウイルスです。

抗生物質(抗菌薬)は細菌にしか効果がありませんので、風邪で受診されるお子さんのほとんどには処方されません。

ただし、風邪が長引いて、こじれて中耳炎になってしまったり、肺炎にまで至ってしまった場合、さらには何らかの基礎疾患をお持ちのお子さんには細菌感染の存在を考えなければならないため抗生物質(抗菌薬)を処方する場合が出てきます。

抗生物質について

「今の風邪症状はウイルス性が考えやすいんでしょうけれど細菌性の可能性がゼロでないなら、大切な子どもですから念のため抗生物質を最初から処方してください」というお願いをされることもあるのですが、これは公衆衛生の観点から望ましくないために通常行いません。

と言いますのも、不必要な抗生物質を処方すればするほど、体内で特定の抗生物質に耐性を獲得した耐性菌が出現しますので、それが将来その子自身や周囲の方にひどい感染を引き起こした場合には使用できる抗生物質の選択肢が限られてしまい、場合によっては致命的になってしまいかねないからです。

すでに抗生物質の不適切使用は社会問題になっていて、医療機関で治療に難渋するケースが見られています。

スケールの大きな話をすると、こういった抗生物質は人体で役割を果たしたあとは下水として排泄され、自然環境に帰るわけですが、近年、この自然界に流出した抗生物質は実のところ河川や小川の微妙な生態系バランスを崩し、細菌群集の構造を変化させ、耐性菌の出現を加速させる一因となっていることがわかってきました。

抗生物質は大変優れた医薬品であり世界中で使用されていますが、優れすぎていることが逆に禍を招いているという現実もなんとも皮肉なものです。

別の観点からの話にはなりますが、思春期から若年青年層にのどの風邪を引き起こすウイルス感染症である伝染性単核症では、よく使われる一部の抗生物質を服用すると全身に皮疹が出てしまうことがありますので、その点でも初期の風邪症状における抗生物質服用には注意をするべきでしょう。

いずれにせよ安易な抗生物質の服用は様々な観点から慎重になるべきです。

お子さんを医療機関に連れてくる目安

さて、話を元に戻します。

お子さんが風邪をひいたら、寒がるなら温かい格好を、暑がるなら一枚上着を脱がせてあげてください。

氷枕やおでこに貼る保冷シートも気持ちが良いと感じるなら使っても良いでしょう。

静かに休める環境さえ作れれば、子どもは元気いっぱいですから程なく回復するでしょう。

食べたがらない子供に無理して食事を与える必要はありませんが、熱が高かったり、嘔吐や下痢をしている時には脱水になりやすいので、少量の水分を時間を開けて繰り返し与えてください。

水分さえ取れていれば大丈夫ですが、水分も取れず、ぐったりしておしっこも減る、視線が合わない、呼びかけに答えない、呼吸が速くて息苦しそう、などの症状があれば医療機関を受診させてください。

それではここからは子どもの風邪の原因について具体的に季節ごとに見ていきましょう。

冬は急な気温の変化で体調を崩しやすかったり、空気が乾燥するためにウイルスの飛散が拡がる傾向にあったりすることから一年で一番風邪をひきやすい季節です。

インフルエンザ

冬に流行する風邪と言ったらやはり季節性インフルエンザが有名です。

これはインフルエンザウイルスに感染することで発症します。

急に高熱が出て倦怠感が強く、のどの痛み、咳、関節痛、筋肉痛を伴うのが特徴です。

潜伏期間(誰かから感染してから実際に発症するまでの期間)は平均2日とされ、何もしなくても多くの場合1週間程度で治ります。

ただし、乳幼児や生まれつき基礎疾患を持つお子さんでは肺炎を起こしたり、基礎疾患の悪化を招いたりする場合がありますので注意が必要です。

お子さんの場合には推奨される解熱薬の種類も限られています。

また、状況に応じてインフルエンザウイルスに特化した抗ウイルス薬も使用できるので、服用することで症状の出ている期間を短縮することができます。

学校保健安全法において、発症した後5日を経過し(発症した日から数えると6日間)、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまでは学校や保育園を休む必要があると定められています。

インフルエンザかどうかは鼻咽頭のぬぐい液を使った抗原検査をすることで、短時間で確認することができます。

予防が大切

ただ、一番大切なのは「予防」です。

秋になったらインフルエンザウイルスに対する予防接種の案内を見かけると思います。

家族も含めて全員が接種することで、感染した際の症状を確実に軽減することができますので、特に基礎疾患のあるお子さんや高齢の方が周りにいたり、受験を控えたお子さんがいたりするご家庭などでは、家族全員が予防接種を受けた方が良いでしょう。

新型コロナウイルス(COVID-19)

新型コロナウイルスはほぼ通年で流行を繰り返していますが、空気が乾燥する冬には流行しやすくなります。

流行するたびにウイルスの顔つきが少しずつ変化していることが特徴で、肺炎を引き起こしやすいウイルスとして認知されています。

抗ウイルス薬も複数登場しました。

症状は発熱、咳、痰、倦怠感、関節痛、頭痛、咽頭痛などです。

新型コロナウイルス(COVID-19)に感染しているかどうかは鼻咽頭のぬぐい液を使った抗原検査をすることで、短時間で確認することができます。

2023年4月に感染症法により5類感染症に分類され、発症した後5日を経過し(発症した日から数えると6日間)、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまでは学校や保育園を休む必要があります。

大人も原則として発症翌日から7日経過するまでが「療養期間」とされ、外出自粛が求められていますが、療養期間に法的根拠は無いため外出は個人の判断に委ねられています。

ワクチンについて

新型コロナウイルス(COVID-19)に対するワクチンの定期接種に関しては今後も変更がある可能性が高いので厚生労働省が出す公式の案内をニュースやホームページなどで確認するのが良いでしょう。

基礎疾患のあるお子さんでは重症化する可能性がありますので、ワクチン接種をお勧めします。

接種可能年齢などは今後も製品毎に異なってくる可能性がありますので、その点は確認が必要ですが、2024年4月に改定された日本小児科学会のガイドラインによれば、基本的に生後6ヶ月以上のすべての子どもに接種が推奨されています。

ノロウイルス

ノロウイルスは特に冬季に流行する代表的な感染性胃腸炎の原因ウイルスです。

手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。

健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化することがあります。

通常は胃腸症状が1~2日続いた後、治癒します。

「ノロウイルス抗原検査」は、ふん便中のノロウイルスを検査キットで検出するもので、3歳未満、65歳以上の方等を対象に日本では健康保険が適用になっており、疑わしい場合には検査で調べることが可能です。

少しずつ暖かくなってくる季節は花粉の季節でもあります。

この時期の風邪症状は小さなお子さんでも花粉に対するアレルギー、いわゆる花粉症であることもあります。

花粉症の初期症状は風邪と見分けがつきづらいので注意が必要ですが、小さなお子さんは鼻水がズルズル続くと中耳炎や副鼻腔炎を発症することがあるため、くしゃみと鼻水だけだから様子をみていたとしても、途中から熱が出てきてぐずるようになった際には医療機関を受診した方が良いでしょう。

春限定の感染症というわけではありませんが、ロタウイルスや溶連菌感染症については知っておいて損はありません。

ロタウイルス

ロタウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎で、乳幼児期にかかりやすい病気です。

主な症状は、水のような下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、発熱、腹痛です。

5歳までにほぼすべての子どもがロタウイルスに感染するといわれていますので過度に恐れる必要はありません。

ただし、下痢や嘔吐が続くと脱水症状がひどくなることがありますので、呼びかけに反応が鈍くなったり、ぐったりしたりするようなら医療機関を受診させてください。

ワクチンについて

赤ちゃんにはロタウイルスに対するワクチンが定期接種で勧められており、初回の接種を生後8週から14週6日までに行います(少し早めの生後6週から接種はできます)。

ワクチン接種により胃腸炎が重症化するリスクを減らすことができます。

なお、打ち忘れてしまったからと言って初回の接種を生後15週以降に受けることは勧められていませんので、その点は注意が必要です。

溶連菌感染症(通年性)

春は日本では入学の季節ですので、小さなお子さんが初めて集団生活に入っていく中で体調を崩しやすい季節でもあります。

例えば学校生活の中で初めて食物アレルギーに気づかれる子もいるでしょう。

そんな中で、喉の痛みと発熱、時に発疹を伴うような風邪を引き起こす病原体の一つに溶連菌があります。

溶連菌感染症になると首のリンパ節が腫れることが多く、首を触ると痛がります。

また、喉がヒリヒリと痛いので食事を食べたがらないこともある一方で、咳はあまり出ないことが特徴です。

最初の方で、抗生物質は風邪には効かないとお話ししましたが、例外がこの溶連菌感染症です。

溶連菌感染症はウイルスではなく、細菌の感染症ですので抗生物質を服用することで改善します。

風邪症状が良くなってくる時に、指先の皮膚がうすくむけてくることもありますが自然に治るため心配はいりません。

ただし、お子さんのおしっこの量が減ったり、濁ったり、血が混じったりする場合には、医療機関を受診させて尿の検査をした方が良いでしょう。

咽頭結膜炎

プール熱と呼ばれることもある咽頭結膜炎は、発熱・のどの痛み・目の充血や目ヤニを主症状とする小児のウイルス感染症で、アデノウイルスというウイルスに感染することで起こります。

6月頃から徐々に増加しはじめ、7~8月に流行のピークを迎えます。

プールでの接触やタオルの共用により感染することもありますので、咽頭結膜炎に感染したら症状が治るまでは家族間でもタオルの共用はしないようにしましょう。

アデノウイルスにはアルコール消毒は効きにくく、石けんと流水でのこまめな手洗いが予防には効果的です。

症状から診断することがほとんどですが、鼻咽頭のぬぐい液からアデノウイルス抗原を検出することも可能です。

特別な治療法はなく、症状にあわせた対症療法が行われます。

学校安全法において、症状が消退した後2日を経過するまで出席停止となっていますのでご注意ください。

ヘルパンギーナ

夏風邪の代表格であるヘルパンギーナは、発熱とのどに小さな水膨れのような発疹が出て痛みが出るのが特徴で、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスというウイルスに感染することが原因となります。

毎年5月頃から流行し始め、6~7月に流行のピークを迎えます。

ほとんどが4歳以下のお子さんです。

のどの痛みのために、食事や飲み物を一時的に嫌がることがありますから、その際はうまく痛み止めを使って症状を和らげてあげることが必要でしょう。

ヘルパンギーナは学校で予防すべき伝染病には含まれていませんが、熱と食欲不振が強い時には脱水に注意しながら家でゆっくり休ませてあげるのが良いでしょう。

ぐったりするようなら医療機関受診をお勧めします。

手足口病

手足口病は、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスに感染することで、口の中や、手足などに水疱性の発疹が出るウイルス感染症で、主に夏に流行のピークを迎えます。

5歳以下の乳幼児で特によく発生します。

手のひらや足の裏にも発疹が出ることが特徴で、発熱は認められたとしてもあまり高くならないことがほとんどです。

数日間のうちに自然に治ります。

なお、発疹が消失してから1か月以内に、一時的に手足の爪が剥がれてしまうお子さんも報告されていますが、それも自然に治る(新しく爪が生えてくる)とされています。

手足口病は、学校で予防すべき伝染病に含まれてはいませんが、高熱が出たり、嘔吐したり、ぐったりしているなどの症状がみられた場合は、医療機関を受診しましょう。

季節ごとの風邪の話は冬からはじめましたので、冬、春、夏ときて、最後は秋になります。

秋は実りの季節で、多くの樹木が果実をつけます。

中には花粉を飛ばすものもありますので、この時期は春同様、鼻水がぐずぐずしたり、くしゃみが出たり、目を痒がったりするようでしたら花粉症も考えた方が良いかもしれません。

夏の終わり頃から秋にかけて流行する風邪ウイルスの代表格としてはRSウイルスがありますので、ご紹介します。

RSウイルス

RSウイルスは呼吸器(気道・気管支・肺)に感染するよく知られたウイルスの一つであり、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに感染すると考えられています。

症状は発熱や鼻汁などの軽い風邪症状から重い肺炎まで様々です。

生後6ヶ月以内にRSウイルスに感染した場合には、重症化する場合がありますので注意が必要です。

また、感染によって重症化するリスクの高い基礎疾患を有する子ども(例えば早産児、生後24か月以下で心臓や肺に基礎疾患がある小児、神経・筋疾患やあるいは免疫不全の基礎疾患を有する小児)も同様に注意が必要です。

一部の新生児、乳幼児には、RSウイルスに対する抗体製剤の投与が保険で認められています。

そういったお子さんでは、RSウイルス感染症の流行初期に注射をし、流行期も引き続き1か月毎に筋肉注射することで重症化を防ぐことが期待できます。

最後に

ここまで、冬→春→夏→秋の順に注意すべき感染症について見てきました。いかがでしょうか?

最後に、季節性はないものの重要な感染症をもう2つと、風邪と症状が似ていて見分けがつきにくいけれど見逃すとやっかいな川崎病についてお話し、この話題について締めくくろうと思います。

マイコプラズマ肺炎

肺炎マイコプラズマはウイルスと細菌の間にある一種の病原体で、5~15歳の小児および青年に好発しますが、現在乳幼児など低年齢児童の発病率も高くなっています。

しつこく乾いた咳が続くのが特徴です。

法定感染症ではありません。

だいたい4年周期で繰り返し流行します。

特定の抗生物質が治療に有効ですので、適切に診断をつけることで感染症状を抑えこむことが可能です。

突発性発疹

突発性発疹は乳児期に、突然の高熱と解熱前後の全身の発疹を特徴とするウイルス感染症で、原因はヒトヘルペスウイルス6あるいは7です。

高熱にもかかわらず通常子どもは元気ですが、解熱後に発疹が出だすと機嫌が悪くなることがあります。

発熱初期に熱性痙攣をひき起こすことがあり、多くの場合、親御さんや保護者の方はパニックになりますが、その後は通常問題なく回復しますので心配しすぎる必要はありません。

川崎病

川崎病は1967年に小児科の川崎富作先生が最初に報告した原因不明の病気で、手塚治先生の漫画「ブラックジャック」にも登場します。

4歳以下の乳幼児に多く、全身の血管に炎症がおきていろいろな症状が出ます。

高熱、両側の眼球結膜(目の白いところ)の充血、真っ赤な唇と苺のようにブツブツの舌、体の発赤疹、手足の腫れ、首のリンパ節の腫れの6つの症状のうち5つ以上の症状があれば川崎病と診断します。

小さなお子さんではBCGを注射した場所が紅く腫れ上がることも、特徴的な症状の1つです。

川崎病にかかって一番問題なのは、特に無治療の場合には、一定の割合で心臓を栄養する血管である冠動脈にこぶができてしまうことです。

いずれにせよ診断されたら入院が必要であり、川崎病のお子さんには、まず免疫グロブリンと呼ばれる血液製剤を点滴で投与し、血液を固まりにくくするアスピリンというお薬を内服してもらいます。

気になる症状が続くようであれば医療機関を受診しましょう

このように、子どもの風邪は様々な原因で起こります。

風邪をひかない子どもなんていないのですから、過度に心配する必要はありませんが、もし気になる症状が続くようなら医療機関の受診を勧めます。

この記事が少しでもお母さん、お父さん、また保護者の方の安心につながれば嬉しく思います。

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