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脂質異常症

脂質異常症(ししついじょうしょう)は、以前は高脂血症(こうしけっしょう)と呼ばれていた代表的な生活習慣病のひとつで、血液中のコレステロールや中性脂肪が増加した状態を指します。

健康診断で引っかかり、医療機関の受診を勧められることで気づかれることがほとんどのケースです。

若い時からコレステロールや中性脂肪の値が高い人もいれば、年を重ねてから、女性であれば閉経してから急に高くなったことで気になり始めた方も多いのではないでしょうか?

そもそも脂質は我々が健康な生活を送る上で大変重要な三大栄養素の一つで、食事から脂肪分をきちんと補給しないと肌がカサカサになったり特定のビタミンが不足したりして体調が悪くなったりと悪影響が出てしまいますので、一定量はコンスタントに摂取する必要があります。

一方で、今日の飽食の時代において、極端なダイエットはもちろん困るのですが、日々の食生活で脂質の摂りすぎに注意しながら過ごすことは、心筋梗塞や脳卒中を予防する上で大変重要です。

ここでは脂質について少し詳しく紹介し、上手な付き合い方についてもお話ししましょう。

脂質とは

脂質には中性脂肪とコレステロールが含まれる

まずは言葉の説明からしておきましょう。

脂質、中性脂肪、コレステロールの3者の違いはなんでしょう?

「脂質」は脂肪(油分)を含んだ物質の総称として用いられます。

血液中に含まれる脂質には、主なものに「中性脂肪」と「コレステロール」があります。

どちらも血中脂質であることには変わりないのですが、実際の役割は少し異なります。

中性脂肪は、私たちが活動するためのエネルギー源になります。

しかし摂りすぎると体脂肪として蓄えられ、生活習慣病を引き起こす要因になります。

一方、コレステロールは細胞膜を構成する成分で、男性ホルモン、女性ホルモンといった体の機能を司る重要なホルモンや、胆汁酸の材料にもなっています。

食事に含まれる脂肪は長いプロセスを経て体に吸収され、エネルギーに変換される

食事から摂取した脂肪は、実は直接血液に溶け込んでいるわけではありません。

脂肪の多い食品は糖質やタンパク質が主体の食品に比べ、吸収に時間がかかります。

脂っこい料理の腹持ちがいいのは、このためなのです。

食品に含まれる脂肪の多くは、化学的に安定した中性脂肪の形をしています。

中性脂肪は、脂肪酸が3本、グリセロールと呼ばれる物質で束ねられた構造をしており、中性を示します。

食事をした際、脂肪が口→食道→胃→十二指腸と移動したところで、中性脂肪は膵臓(すいぞう)から出る消化酵素リパーゼの働きにより、グリセロールに脂肪酸を一つつけたままのモノグリセリドと、脂肪酸、グリセロールにバラバラに分解されます。

水に溶けやすいグリセロールはそのまま十二指腸の先の小腸から吸収されます。

モノグリセリドと脂肪酸は、水に溶けにくい性質があるため、そのままではうまく吸収されません。

そこで、これらは胆嚢(たんのう)から出る胆汁(胆汁酸)と混じり合い、乳化されてから取り込まれます。

乳化とは

乳化とは、水と油のように本来混じり合わない二つの液体が、ミセルという特殊な液滴を一方が形成することで濁って安定的に混じり合う現象を言います。

例えば、牛乳です。

牛乳には脂肪分が含まれていますよね?

でもパックから出てくる牛乳は最後の一滴まで油がぷかぷか浮かんでいるということは無いです。

それは、この乳化という現象が起きているからなのです。

モノグリセリドと脂肪酸は腸内に分泌された胆汁酸の働きによりミセルを形成し、小腸から吸収されます。

こうして小腸から吸収された脂肪の分解産物は、今度はタンパク質と結合し、リポタンパク質という大きな球体をつくります。

これをカイロミクロンと呼びます。

カイロミクロンはリンパ管から吸収されリンパの流れにのり、全身へ運ばれます。

脂肪酸には様々な長さがあるのですが、短い脂肪酸は、ブドウ糖やアミノ酸と一緒にすぐに肝臓に向かいますが、それ以外の脂肪成分の多くはリンパ経由の道のりをたどります。

食後3、4時間してやっと脂肪が吸収されるのはこうした長いプロセスがあるためです。

全身に運ばれた脂肪酸は、細胞内のミトコンドリアと呼ばれるエンジンで、酸素を用いて二酸化炭素と水にまで完全に分解されることにより(これを酸化と呼びます)大きなエネルギーを放出し、このエネルギーを利用して我々は毎日活動をしているのです。

食品に含まれるコレステロールの消化吸収

さて、ここまでは食事中に含まれる中性脂肪の話でしたが、食品に含まれるコレステロールの消化吸収はどのようになっているのでしょうか?

食品として摂取したコレステロールは、胆汁酸だけでできたミセルでは、溶解力が小さくなかなか乳化されず、吸収はできません。

そこで登場するのが先ほど説明した中性脂肪の分解産物であるモノグリセリドです。

モノグリセリドと胆汁酸が混じったものを混合ミセルと呼びます。

コレステロールはこの混合ミセルに助けられ、腸管に吸収され、その後、カイロミクロンになって肝臓に運ばれていきます。

コレステロールは食事から摂取されるだけでなく、肝臓で新しく作られる

実は、コレステロールは日々の食事から摂取している量は全体の1/3にすぎず、残りの2/3は日々、肝臓でせっせと新しく作られています。

先にお話しさせていただいたように、我々が生きていくのに欠かせない各種ホルモンはコレステロールから合成されるため、体内では常に一定量のコレステロールが必要になります。

万が一飢餓状態に陥っても、自分で作れるようにしておくシステムを搭載しているのはそういった意味でも理にかなっていると言えます。

コレステロールは体内で脂質・糖質・タンパク質の三大栄養素を材料に、主に肝臓で合成されます。

そのスタートとなるのが脂質・糖質・タンパク質の分解過程でできるアセチルコエンザイムA(アセチルCoA)という物質です。

コレステロールを1個つくるには、18個のアセチルCoAと多くの酵素反応が必要で、多くのエネルギーを消費します。

このためコレステロール合成は、アセチルCoAが十分蓄積できる休息時に盛んです。

また大量に食べたり、砂糖を多く摂取してエネルギー源を急速に摂り入れた時も、コレステロール合成は盛んになります。

一方、有酸素運動をしているときは、コレステロールは合成されづらくなります。

つまり、コレステロールの多い食品を避けても、食べ過ぎや甘味嗜好があり、運動が嫌いな人は体内でコレステロールが合成されやすいといえます。

アセチルCoAはHMG CoAという物質に変換されたのち、多くの反応を経てコレステロールになります。

このHMG CoAは次のステップでメバロン酸という物質に変換されますが、そのステップを媒介しているのがHMG CoA還元酵素というタンパク質になります。

現在広く用いられている高脂血症に対する内服薬の一つにスタチン製剤(例えばロスバスタチンやアトルバスタチンなど)がありますが、スタチン製剤はこのHMG CoA還元酵素を妨害することで体内のコレステロール合成を抑え、血中のコレステロール値を低下させます。

悪玉コレステロールと善玉コレステロール

さて、一口にコレステロールと言っても実は様々なタイプがあることをご存知でしょうか?

コレステロールそのものは先に述べたようにそのままでは水に溶けませんので、血液中ではリポタンパクとして球体の形で含まれています。

球体であるリポタンパクにはいろいろな大きさや密度のものが存在しており、比重の低い(すなわち脂肪の量が多い)ものから順に、カイロミクロン、VLDL(超低密度リポタンパク)、IDL(中間密度リポタンパク)、LDL(低密度リポタンパク)そしてHDL(高密度リポタンパク)があります。

このうち、HDLに含まれるコレステロールは,身体中からコレステロールをとり出して肝臓に運ぶことから善玉コレステロールと呼ばれます。

一方でLDLやVLDL中のコレステロールは全身に運ばれていってそこに降り積もり、長い時間が経つと様々な悪さをするため、悪玉コレステロールとも呼ばれています。

脳梗塞や心筋梗塞にもつながる脂質異常症

では、悪玉コレステロールであるLDLやVLDLは具体的にどんな悪さをするのでしょう?

血液中に脂質が増えたまま長い期間を過ごすと、増えた脂質が血管の内側に少しずつたまって、血管の中にかたまりを作っていきます。

そして血液の流れが滞ってしまいます(動脈硬化)。

動脈硬化になっても、まだ自覚症状はなく、心臓や脳の血管につまり、心筋梗塞や脳梗塞の発作を起こしたり、血流が滞ることで脳卒中などがおきて、ようやく脂質異常症の危険さに気づくのが実際です。

しかし、ご存じのとおり、その時にはかなり危険な状態となり、命にかかわったり、身体にまひが残ったりしてしまいます。

日本人の死因の第2位と3位を占めているのは、心臓病と、脳卒中です。

これらはどちらも、動脈硬化が原因となって起こる血管の病気で、動脈硬化を防ぐことはとても重要なのです。

現在患者数は約700万人いるといわれており、増加傾向にあります。

脂質異常症は、生活習慣病の中でも特に自覚症状が見られず、定期的な健康診断で調べてもらうことでしか、病気を発見する方法はありません。

脂質異常症の診断は、12時間以上食事をとらずにいたあと採血して、血中の脂質を測定します。

脂質異常症の原因

脂質異常症の原因は多くの場合、食生活と運動習慣にあります。

実は親もコレステロールが高かったんですとおっしゃる患者さんもいらっしゃるのですが、ごく若い時から異常にコレステロール値が高い一部の方をのぞいて、多くは遺伝的要素よりも、食生活や運動の習慣の有無が親子間で似通っていることに起因しているでしょう。

一般的にイメージされているように、油の多い食事、間食、野菜不足、運動不足などが脂質異常症につながります。

また、女性では閉経などのホルモンバランスの変化が脂質異常症につながる傾向が強くなります。

食べ過ぎ(コレステロールの場合はコレステロール分の摂取過剰、中性脂肪の場合は全体的な食べ過ぎ)、アルコールの飲み過ぎ(中性脂肪)、運動不足に注意して生活しましょう。

また糖尿病では中性脂肪の産生が増加し、喫煙者ではHDLコレステロール(善玉コレステロール)が低下する傾向が認められるため注意が必要です。

食事や運動で改善によっても血液中のコレステロール値、中性脂肪値が下がらない場合には医療機関に相談すると良いでしょう。

特に、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高い患者さんでは、早い段階で内服薬を用いた治療が勧められます。

健康的な食生活と運動習慣を身につけて、脂質異常症に適切に対処することが大切なのです。

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